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呼吸器疾患,特に間質性肺疾患に対するバイオマーカーとして,Krebs von den Lungen-6(KL-6),surfactant protein-A(SP-A),surfactant protein-D(SP-D)があるが,いずれも日本発のバイオマーカーである。欧米では現在,研究用試薬としては使用されているが,臨床では使用されていない。これらに関する論文の大部分は日本からのものである。日本呼吸器学会の「特発性間質性肺炎診断と治療の手引き」1)では,バイオマーカーは間質性肺炎を疑うきっかけや病態のモニタリング,治療反応性の評価に有用であるとされ,厚生労働省の特定疾患認定基準では,KL-6,SP-A,SP-D,LDH(乳酸脱水素酵素),それぞれの上昇のうち1項目以上の陽性を診断基準としている。
一方,ATS*1/ERS*2の間質性肺炎のステートメントでも,記載は少ないながらもバイオマーカーの項がある。KL-6,SP-A,SP-Dは特発性肺線維症(IPF)では血清中で上昇し,予後の不良な患者を同定するのに有用である可能性があるとしつつも,特にIPFにおいては小さなコホート研究であり,独立した検証がない2, 3)ことを指摘している。また,英国の間質性肺炎のガイドライン4, 5)には,バイオマーカーの記載はない。
バイオマーカーの有用性とは,①他疾患との鑑別が可能か,②間質性肺炎の分類に有用か,③重症度や今後の進展を予測可能か,④予後を予測可能か,⑤治療をガイドできるか,で判断される。本稿では,間質性肺疾患におけるバイオマーカーの有用性についてのエビデンスを紹介しつつ,実際の診療でどのように使用するかを考察する。
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