特集 ARDSの今を語り尽くす
【コラム】メカニカルパワーとは?—Dr. Gattinoniのメッセージを読み解く
川村 篤
1
Atsushi KAWAMURA
1
1大阪母子医療センター 集中治療科
キーワード:
仕事率
,
仕事量
,
人工呼吸関連肺傷害
,
VILI
,
抵抗成分
,
男性成分
,
PEEP
,
呼吸回数
,
疲労破壊
Keyword:
仕事率
,
仕事量
,
人工呼吸関連肺傷害
,
VILI
,
抵抗成分
,
男性成分
,
PEEP
,
呼吸回数
,
疲労破壊
pp.50-55
発行日 2024年1月1日
Published Date 2024/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102201150
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はじめに:Gattinoniが提唱したメカニカルパワー(MP)
Gattinoniら1)は,人工呼吸器で設定できる換気量,圧力,流量がすべてエネルギーの構成要素となり,肺胞にかかるpower(仕事率)が人工呼吸関連肺傷害ventilation-induced lung injuries(VILI)を起こす因子であるとし,メカニカルパワーmechanical power(MP)によるVILIをergotraumaと名づけた。過膨張に伴う肺傷害の要因はこれまで考えられてきたforce(圧力)ではなく仕事率であり,仕事率がある一定の閾値を超えると肺傷害が生じるのではないか,と述べた。言い換えると,肺傷害にとって重要なのは「静的な圧力」ではなく「動き」であるということであろう。
駆動圧driving pressure(ΔP)やstrain(≒1回換気量/機能的残気量)はVILIに関連する重要な因子であることは言うまでもない。しかし,動物実験によると同じstress(経肺圧),strainの換気を行っても,呼吸回数や吸気流量が異なると肺傷害の程度が異なる2,3)ことも示されており,Gattinoniらの説はVILIを考慮するうえで重要な概念かもしれない。
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