特集 ARDSの今を語り尽くす
❻ ARDSにおける適切なPEEPとは? ARDS=high PEEPは真か?—経験的なPEEP設定と経肺圧に基づく設定との整合性をはかる積み重ねが重要
高橋 慶彦
1
,
加茂 徹郎
2
Yoshihiko TAKAHASHI
1
,
Tetsuro KAMO
2
1前橋赤十字病院 集中治療科・救急科
2東京都立墨東病院 集中治療科
キーワード:
ARDS
,
適切なPEEPの探求
,
PEEPの生理学的作用
,
経肺圧
,
食道内圧測定
Keyword:
ARDS
,
適切なPEEPの探求
,
PEEPの生理学的作用
,
経肺圧
,
食道内圧測定
pp.57-68
発行日 2024年1月1日
Published Date 2024/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102201151
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はじめに
急性呼吸窮迫症候群(ARDS)患者に対する人工呼吸器管理において,呼気終末陽圧(PEEP)は,酸素化の改善や肺保護作用をもたらす1)が,適切なPEEP設定には依然として大きな議論が残る。ARDSに対するhigh PEEPとlow PEEPの効果を評価した主要な試験2〜4)では,死亡率の低下は示されなかった。しかし,その後のメタ解析では,中等症〜重症ARDS患者(P/F比*1≦200)では,より高いPEEPが死亡率を低下させる5)ことが示唆された。
近年発表されたEuropean Society of Intensive Care Medicine(ESICM)のARDSガイドライン6)では,high PEEPは推奨できないと述べている。また,経肺圧やコンプライアンス法などの生理学的な指標を用いたPEEP設定法についても明確な推奨をしていない。一方で,日本のARDS診療ガイドライン20217)では,上記のメタ解析の結果をふまえ,中等症以上のARDSにはプラトー圧が30cmH2Oを超えないhigh PEEPを推奨している。しかし,引用した試験の異質性も高く,ガイドライン間でのコンセンサスが得られていないため,日常臨床にこれらの推奨を用いるには注意が必要である。
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