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輸液に関するクリニカルクエスチョンのなかで,集中治療にかかわる医療者にとって最大の関心は“目の前の患者は輸液を必要としている状態なのか,輸液の効果があるのか”にあるといっても過言ではない。適切な輸液療法は患者の循環不全をすみやかに安定化させ,不必要な昇圧薬の使用を避けることができる。一方で,過剰輸液は患者のアウトカムを悪化させることもわかってきた1〜3)。したがって,適切な時期に適切な量の輸液蘇生を行うことが重要となる。
輸液治療を行う際に鍵となる検討事項は,①目の前の患者は輸液によって臓器灌流の低下が改善すると考えられる状態にあるのか,すなわち輸液を必要としているのか,②実際に輸液を行ったら何らかの因子が改善するのか,すなわち輸液に対する反応性があるのか,の2点である。輸液必要性,輸液反応性の両者を意識することが,最適なタイミングで最適量の輸液を行い,過剰輸液を避けるための第一歩になる。
本稿では,主として輸液必要性,輸液反応性の評価について,方法・有用性・限界・その背景にある生理学などに焦点を当てて解説していく。
Summary
●輸液蘇生の目的は“循環不全の改善”である。輸液が必要か否か,すなわち輸液必要性を判断するには,循環不全の有無とその程度を考慮する必要がある。
●輸液反応性とは,急速輸液によって1回拍出量または心拍出量が10〜15%増加することを言う。ICUに入室している循環不全を呈する患者の50%は輸液反応性がない。
●輸液反応性の指標はさまざまあるが,各々の背景にある生理学を理解し,各検査の利点と限界を知ったうえで利用する必要がある。
●過小輸液・過剰輸液の害を避けるためには,輸液必要性の同定,輸液反応性の事前予測と事後評価を怠らない努力が必要である。
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