特集 輸液・ボリューム管理
Part 1 総論
回答4:積極的に輸液する—敗血症性ショックのフェーズを意識した輸液管理
増山 智之
1
,
讃井 將満
2
Tomoyuki MASUYAMA
1
,
Masamitsu SANUI
2
1自治医科大学附属さいたま医療センター 救急科
2自治医科大学附属さいたま医療センター 麻酔科・集中治療部
pp.338-340
発行日 2017年4月1日
Published Date 2017/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102200388
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■敗血症性ショックにおける
輸液治療のフェーズ
敗血症性ショックにおける輸液治療のフェーズは,4つに分類される1)。①ショックにより生命の危機に瀕した状態を救命するrescue期,②組織灌流を最適化し臓器障害の進行を最小限にくいとめるため積極的に輸液蘇生を行うoptimization期,③ショックは管理され維持程度の輸液で状態の安定化を保つstabilization期,④ショックから離脱し積極的に除水をしていくde-escalation期,である。フェーズを意識することで治療経過を俯瞰でき,各フェーズにおける輸液治療の目標を明確にできる。
本例は肺炎による敗血症性ショックに対して,輸液と昇圧薬による循環蘇生が開始されているが,いまだ血行動態は不安定である。来院から4時間程度(初療に1時間と推測)で輸液量2500mLと決して多くはないが,すでに肺水腫が進行している。左室収縮は保たれているようなので,敗血症による急性呼吸窮迫症候群acute respiratory distress syndrome(ARDS)である。今後の循環・呼吸管理が難渋することが予測される。フェーズでいうとrescue期からoptimization期への移行期であり,まずはショックの是正と組織灌流の最適化を優先させたい。結果として,人工呼吸器での呼吸管理に限界を迎える可能性は高く,V-V ECMOの導入は視野に入れておく。
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