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肺は生体内の最大の臓器である。それにもかかわらず従来,空気を大量に含みかつ肋骨に包まれているため,超音波による観察には適さないという考えが普及し,超音波で観察する利点は客観性に優れるCT装置の普及にかき消され,大きな潮流には至らなかった。本邦では,世界に先駆けて1958年,今から50年以上も前にamplitude modeを用いた肺の観察が行われた1,2)。その後,1978年には名取ら3)が,brightness modeを用いた呼吸器全般への応用を報告している。同じく,急性期にwhole body ultrasonographyを用いるという考えをもつフランスのLichtenstein4)も肺エコーに取り組み,呼吸不全の原因検索を行う超音波診断手法としてBLUE protocolを考案した。2011年にNew England Journal of Medicine誌にMooreら5)のPoint-of-Care Ultrasonographyが掲載されて以来,肺エコーが見直されることとなった。ようやく世界は,この最大の臓器が超音波で観察できることを認識するようになったといえる。
肺エコーには,上述したように2つの潮流がある。急性期の呼吸困難などの病態に対するアプローチのためのPoint-of-Care Lung Ultrasonographyは,フランスLichtensteinの考えに基づいている。一方で,名取ら日本のグループが提唱するのは,急性期のfirst touchというよりは,その後の精査などが中心となっている超音波診断学であるという印象がある。今後,両者の長所を組み合わせたシームレスな呼吸管理のための超音波診断手法の確立が望まれており,現在,日本超音波医学会でも用語の統一を含め,両者の融合をはかるべくワーキンググループが立ち上がっており,筆者もその一員である。
本稿では,主に急性期肺エコーを中心に紹介するが,ここで紹介する内容は近い将来,超音波医学全体の整合性を図るために変更が行われる可能性があることを留意願いたい。なお現在,急性期肺エコーに関しては,国際コンセンサス6)が提案されている。
Summary
●肺エコーに用いるプローブについては,リニア型は体表に近い肋骨,胸膜,胸膜下の観察に,セクタ型は肺実質,胸水,横隔膜など深部の観察に適している。
●超音波の性質上,肺エコーで観察できるのは基本的に病的肺であると考える。
●肺エコーの基本ビューはbat signであり,肋骨をエコー画面上に描出し,胸膜と他の高輝度線状陰影を区別するための重要な像である。
●肺エコーは,気胸,胸水,間質症候群,無気肺の診断に関するエビデンスも集積しつつある。
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