徹底分析シリーズ 脳外科手術のControversies―1
脳外科麻酔に前投薬を用いるべきか?
後藤 祐也
1
,
鈴木 昭広
2
Yuya GOTO
1
,
Akihiro SUZUKI
2
1旭川医科大学病院 麻酔科
2旭川医科大学病院 救急部
pp.494-498
発行日 2009年6月1日
Published Date 2009/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101100663
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脳はおよそ1500g,人体の総重量のたった2%程度の臓器であるが,そこにはその人そのものが宿っている。ヒトは心臓移植を受けても脳移植を受けることはあり得ない。脳が失われることはその人が失われることを意味し,脳は決して交換することができない唯一の存在だからである。それだけに,この人格の宿る臓器に対する手術への不安は大きいといえる。われわれの以前の調査1)では,未破裂脳動脈瘤のクリッピング手術を受ける患者のほとんどが術前不安から麻酔前投薬を希望したという事実がある。
一方で,脳外科手術においては従来から前投薬は控えめの傾向があったといえる。その最大の理由は意識レベルの変化が前投薬によりマスクされることであろう。近年,歩行入室・日帰り手術の増加などの変化に加え,患者取り違えの予防の観点から,前投薬は少なめか,あるいは行わない施設が増えてきている。唯一無二の重要臓器に侵襲を加える脳外科手術の麻酔において,はたして前投薬は必要なのだろうか。
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