特集 内分泌・代謝・電解質
9.糖尿病性ケトアシドーシス,高浸透圧性高血糖症候群—脳浮腫や低カリウム血症をきたさない適切な治療とは
上田 剛士
1
Takeshi UEDA
1
1洛和会丸太町病院 救急・総合診療科
pp.555-564
発行日 2015年7月1日
Published Date 2015/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102200190
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糖尿病性ケトアシドーシスdiabetic ketoacidosis(DKA)では,前方視的な研究〔特に無作為化比較試験(RCT)〕が少なく,最適な治療についてはよくわかっていないのが現状である。高浸透圧性高血糖症候群hyperosmolar hyperglycemic syndrome(HHS)は,DKAと比較して不均一な患者群であり,予後は併存疾患に大きく左右される。そのため,適切な治療に関するエビデンスはさらに構築しづらい。このような制限があるものの,2009年の米国糖尿病学会(ADA*1)のstatement1)は,エビデンスと経験に基づいたわかりやすいDKA/HHSの治療プロトコルとして今でも広く用いられている。DKAはインスリン枯渇,HHSでは脱水による病態が主であり,検査所見も両者では異なるが(表1)2),治療方針の大筋は同じで大量輸液とインスリン投与である。しかしながら,これらの治療や炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)の投与は脳浮腫や低カリウム(K)血症のリスクとなり得る。
本稿では,ADAの治療プロトコルを参考に,脳浮腫や低K血症をきたさない適切なDKA/HHSの治療とは何かを科学的根拠を交えて解説する。
Summary
●輸液は,生理食塩液もしくはリンゲル液で循環不全を改善するように十分量を投与するが,呼吸不全に注意する。
●血糖値は50〜70mg/dL/hrで低下することが多いが,有効血清浸透圧の変化は最小限にとどめる。
●血糖値が200〜300mg/dLとなれば糖を補充し,インスリンを減量する。
●Kの補正は重要だが,アシドーシスと低P血症の補正の必要性には議論がある。
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