特集 内分泌・代謝・電解質
【コラム】低血糖性脳症—予後の予測は可能か
植西 憲達
1
Norimichi UENISHI
1
1藤田保健衛生大学 救急総合内科
pp.566-570
発行日 2015年7月1日
Published Date 2015/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102200191
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低血糖性脳症は,治療が遅れると不可逆的な意識障害や,高次機能障害,麻痺などの神経学的後遺症を残したり,場合によっては死に至る内分泌緊急症である。一口に低血糖性脳症といっても,糖の投与にてすぐに意識が回復する例から,数日〜数週たって回復する例,不可逆的に重度の神経学的後遺症を残す例もある。患者の意識や運動機能が回復するかどうかは,治療の選択を行ううえで重要なポイントとなる。
本稿では,低血糖性脳症の患者において,悪い転帰を予測する因子は何なのか,また,そもそも予後を予測することは可能なのかについて解説する。
Summary
●低血糖の時間が60分間でも不可逆的な神経学的障害をきたすことがあり,低血糖の迅速な診断と治療が要求される。
●来院時の重度の低血糖,長い低血糖の持続時間,高めの体温,低い乳酸値は来院1週間後における不良な神経学的予後と関連がある。
●長期の神経学的予後の予測因子は,臨床所見や生化学検査ではわかっていない。
●低血糖性脳症は早期(1日以内)にMRIのDWIで半卵円中心,放線冠,脳室周囲,内包,脳梁膨大部の白質と大脳皮質,海馬,尾状核,被殻の灰白質に異常信号を生じ得る。
●発症早期(1日以内)のMRIが正常であったり,内包,放線冠,脳梁膨大部の局所のみにDWIで病変がみられる場合は通常予後良好であり,糖の投与で迅速に症状も画像所見も改善することが多い。
●MRIで広範囲な両側性の白質病変や広範囲な大脳皮質病変,被殻,尾状核病変を示す患者の予後は悪い報告が多いが,完全な回復を示す例も報告されている。
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