けんさ—私の経験
糖尿病性ケトアシドーシスと低リン血症
並河 整
1
1松江赤十字病院第1内科
pp.421
発行日 1999年10月30日
Published Date 1999/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402906404
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低リン血症は,赤血球中2,3-DPG減少の結果,組織の低酸素状態の原因となる.糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)の治療経過中に,低リン血症による意識障害の遷延をきたした症例を経験した.
症例は23歳,女性.1998年6月より口渇,多尿,体重減少があり,8月8日意識障害を主訴に当院救急外来を受診した.意識はIII-300で,血糖値652mg/dl,尿ケトン(4+)で動脈血ガスはpH 6.870,PaO2 85.1mmHg,PaCO2 26.7mmHg,HCO3- 4.9mmol/l,BE -29.3mmol/lで,糖尿病性ケトアシドーシスによる昏睡と診断し治療を開始した.輸液とインスリン投与により血糖値,アシドーシスは改善し意識レベルも改善したが,横紋筋融解症による急性腎不全のため第3病日血液透析を施行した.透析施行中,呼吸困難感の増悪,意識障害の増悪があり気管内挿管,呼吸管理を開始した.その後数回の透析で腎機能は正常化し呼吸状態も安定したにもかかわらず意識障害(III-300)は遷延し,頭部CTの所見も入院時と著変なく,髄液検査正常,下垂体ホルモンなど内分泌検査も正常であった.一方,血清リンは入院時4.9mg/dlであったが第3病日0.7mg/dlに低下しており,その後も低値を持続していた.リンの補充により第7病日には意識回復し始め,第8病日には抜管し,後遺症なく糖尿病教育後退院した.
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