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2012年6月のJournal of American Medical Association誌に,“Berlin definition”という急性呼吸窮迫症候群acute respiratory distress syndrome(ARDS)の新しい定義を提唱した論文1)が掲載された。このBerlin definitionは,それまでのAECC*1 definitionに代わる新しいARDSの定義として,現在広く使用されている。しかし,Berlin definitionは基本的にAECC definitionの概念を引き継いだ基準であり,いわばAECC definitionのマイナーチェンジ版と考えることができる。Berlin definitionを正しく理解するためには,その元となったAECC definitionについて理解する必要がある。1994年に発表されたAECC definitionは,良くも悪くもその後のARDSについての概念や研究の方向性を決定づけ,多くの成果とともに少なからず混乱や誤解を生む原因となっている。本稿は,約50年前のAshbaughら2)による症例報告から,AECC definition,そして現在のBerlin definitionに至るまでの過程をたどり,「ARDSとは本当は何なのか」を理解することを目的としている。
Summary
●Berlin definitionはAECC definitionのマイナーチェンジ版であり「ARDSとは何か?」を定義し直したものではない。
●Berlin definitionの定義を正しく理解するためには,AECC definitionの作成過程の理解が不可欠である。
●多くの医師がイメージするARDSと,AECC definitionやBerlin definitionで定義されるARDSには大きな乖離がある。
●ARDSという言葉を用いるときは,どのような意図で用いているのかを意識することが重要である。
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