特集 ARDS Berlinその後
2.ARDSの疫学—発症率,発症トリガー/危険因子,死亡率と長期予後
永田 功
1
,
武居 哲洋
1
Isao NAGATA
1
,
Tetsuhiro TAKEI
1
1横浜市立みなと赤十字病院 集中治療部
pp.9-17
発行日 2015年1月1日
Published Date 2015/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102200122
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1967年に,Ashbaughら1)により成人の急性呼吸窮迫症候群 acute respiratory distress syndrome(ARDS)が報告され,1994年にAmerican-European Consensus Conference(AECC)によりARDSの診断基準(AECC definition)2)が示され,2012年には新しいARDSの診断基準(Berlin definition)3)が提示された。Ashbaughらの報告から50年近くが経過したが,この間にARDSの病態についての理解は格段に深まり,呼吸管理の方法も大きく進化した。最近は,病態生理の理解や治療の確立のみならず,ARDSから回復した患者の長期予後にも注目が集まっている4〜8)。本稿では,ARDSの疫学として,その発症率,肺傷害の発症トリガーと危険因子,死亡率,長期予後についてレビューする。
Summary
●2000年以降の研究では,ARDSの発症率は5〜81人/10万人/年と大きな幅をもって報告されているが,少なくとも決してまれな疾患ではない。
●敗血症は主要なARDSの発症トリガーであり,なかでも肺炎による敗血症が最大のカテゴリーである。
●システマチックレビューによるARDSのプール死亡率は43〜44%であるが,経年的に減少しているのか不変なのか,見解が定まっていない。
●ARDS生存退院患者のうち,数年にわたり身体機能障害,認知機能障害,精神的障害などの後遺症に苦しむ患者は少なくない。
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