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第1土曜特集 ARDSの治療戦略――個別化診療への道筋
総論・メカニズム
ARDSの歴史と定義
History and definition of ARDS
橋本 悟
1
Satoru HASHIMOTO
1
1NPO法人集中治療コラボレーションネットワーク
キーワード:
ベルリン定義
,
AECC定義
,
肺水腫
,
急性呼吸窮迫症候群(ARDS)
Keyword:
ベルリン定義
,
AECC定義
,
肺水腫
,
急性呼吸窮迫症候群(ARDS)
pp.4-9
発行日 2023年7月1日
Published Date 2023/7/1
DOI https://doi.org/10.32118/ayu286014
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急性呼吸窮迫症候群(ARDS)は,既存の基礎疾患に続いて急性に発症する病態の総称である.非心原性肺水腫として古くよりその病態は指摘されていたが,特に近年の医学の進歩により,急性呼吸不全患者が陽圧人工呼吸管理されることで顕在化した.その本体はびまん性肺損傷による透過性亢進型肺水腫であり,重度の低酸素血症を特徴とする.1967年にはじめて報告されて以来,集中治療において敗血症と並んで死亡率の高い疾患とされ,いまだに有効な薬物治療は報告されていない.またその定義についても長く議論され,ようやく1994年にAECC(American-European Consensus Conference)で報告された定義により混乱が収まり,その後,多くの臨床試験が行われることとなった.しかしこの定義も多くの問題を抱えていることが指摘され,2021年にその改良版として,いわゆるベルリン定義が報告された.ベルリン定義では,ARDSは低酸素血症で示される重症度によって軽症,中等症,重症の3つに分類され,それぞれの病態に応じた治療法などが提唱されている.ベルリン定義は現在広く受け入れられているが,これもいまだに問題点を抱えており,今後,さらなる発展が期待されるところである.
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