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敗血症に伴って認められる凝固線溶異常〔敗血症性disseminated intravascular coagulation(DIC)〕は多臓器障害の一因となり,その症例が予後不良であることを示唆する。しかし,DICという病態を治療対象としてとらえ抗凝固療法を行うことの有用性については,現時点では意見の統一がはかられていない。伝統的に我が国ではDIC診療が盛んであり,敗血症性DICに陥った場合に抗凝固療法が選択されることが多い。一方で,国際的には敗血症診療における抗凝固療法は推奨されておらず,国内外で抗凝固療法に対する温度差があるのも事実である。かつて活性化プロテインC製剤,アンチトロンビン製剤が重症敗血症を対象として大規模無作為化比較試験(RCT)で検証されたが,その有効性を確立することはできなかった。また,近年,新規抗凝固薬としてトロンボモジュリン製剤が我が国ではDIC症例に対し広く使用されているが,いまだ質の高いエビデンスは不十分である。本稿では,抗凝固療法を行うことの是非という観点から,現時点で明らかとなっていること,いないことについて基礎的知見・臨床的知見の両面から論じる。
Summary
●SIRSに関連する凝固障害(SAC)は,多臓器障害の進行に密接に関連し,転帰の悪化につながる。
●微生物に対する初期の生体防御反応において,微小血栓形成が重要な役割を果たすとする概念(immunothrombosis)が注目されている。
●アンチトロンビン製剤やトロンボモジュリン製剤など,我が国では広く使用されている抗凝固薬は国際的には推奨されず,国内外で抗凝固療法に対する温度差がある。
●トロンボモジュリン製剤は複数の観察研究においてその有効性が証明されているが,RCTによる決定的な結論は得られていない。現在,多国間第Ⅲ相RCTが進行中である。
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