ヒューマンバイオロジー--臨床への展開 妊娠中毒症
Topics
妊娠中毒症と抗凝固・線溶療法
寺尾 俊彦
1
Toshihiko Terao
1
1浜松医科大学産婦人科教室
pp.886-891
発行日 1985年11月10日
Published Date 1985/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409207283
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妊娠中毒症患者の病像の一部として,循環血中の血液凝固因子の消費に起因した減少(血小板数の減少,血小板機能の低下,血漿第V因子の減少,プラスミノーゲンの低下,AT-IIIの滅少,血中FDPの増加,尿中FDPの増加,血中フィブリノーゲン量の減少)や胎盤でのフィブリン沈着と胎盤血流量の減少,さらにまた,腎でのフィブリン沈着が認められることから,妊娠中毒症の成因や病態に血管内血液凝固が関与し,慢性のDICであると見做す考え方がある。
McKay1)によれば,子癇では病理学的に肝,脳,副腎,肺,胃腸管,心,脾,腎臓なと多臓器にフィブリン・血小板血栓が認められ,各臓器によって血栓の認められる頻度は異なるが腎臓では約5%に認められるという。また,子癇にみられる血栓は急性のDICの結果であり,血液凝固学的には図1の過程をたどる。治療過程が図1のような経過をたどるので,検査する時期によって血液凝固学的所見は異なり,縦点線において調べると第VIII因子は高値,フィブリノーゲン値は正常,血小板数は低下という所見が得られる。通常の妊娠中毒症では、慢性に経過し,血管内血液凝固の軽度な活性化が何度も繰り返して起こり,図2のような経過をたどる。その結果,フィブリノーゲン,第V,VII,VIII,X因子の増量,血小板数の減少,FDPおよび可溶性フィブリンの増量が認が認められる。
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