特集 Severe Sepsis & Septic Shock
11.ICUにおける早期離床と長期予後―「できない」という思い込みが早期離床を妨げる
田中 竜馬
1
Ryoma TANAKA
1
1LDS Hospital呼吸器内科・集中治療科
pp.475-478
発行日 2014年7月1日
Published Date 2014/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102100677
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重症疾患による身体や精神への影響は急性期にとどまらない。65歳以上の重症敗血症患者1194例(入院件数1520回)を対象にした米国における観察研究によると,敗血症患者が新たに中等度~重度の認知機能障害を発症する頻度は高く〔16.7%,95%信頼区間(CI)13.8~19.7%〕,また,その影響は8年間にもわたって続いている1)。急性呼吸窮迫症候群(ARDS)患者(うち40%が敗血症を合併)の長期合併症に関する観察研究では,患者の平均年齢が45歳と比較的若年であったにもかかわらず,退院後1年経過してもおよそ半数が仕事に復帰できず2),5年経過してもすべての患者に筋力低下の訴えがあった3)。さらに,およそ半数の患者が不安神経症あるいはうつ病の診断を受けている3)。ICUから生存退院した患者を対象にした研究は,退院後に心的外傷後ストレス障害post-traumatic stress disorder(PTSD)を発症する頻度を22%4)と報告している。
このように,敗血症に限らず重症疾患は長期にわたって身体機能のみならず,認知機能,精神機能に重大な変化を及ぼすことがあり,post-intensive care syndrome(PICS)と呼ばれている5)。
Summary
●重症疾患による長期合併症の頻度は高い。
●急性期の譫妄の期間と長期の認知機能障害の程度には相関がある。
●譫妄を予防するために早期離床が推奨されている。
●早期離床は安全に行うことができる。
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