2頁の知識
早期離床
澁澤 喜守雄
1
1東京大學
pp.36-37
発行日 1949年12月15日
Published Date 1949/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661906580
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腹部の手術のあと普通には仰臥位その他で靜臥を1週間ぐらいつづけていますが,術後24時間あるいは48時間ごろ起き上つて,すこし歩く練習をするのが,ここでいう早期離床です。早期離床というのはアメリカのearly rising and ambulationというのを私たちが邦譯したので,早期といつても術後何時間までというようなかたい制限は勿論ありませんし,英米諸國の樣子をうかがつても,術後24時間前後(つまり囘復第1日)を早期という人もあり,48時間前後(つまり囘復第2日)を早期という人もあるわけです。また第4日・第5日ごろを早期という人もありますが,第5日第6日になつて離床するのは普通の離床法とほとんどちがいませんから,ここでは第2日頃までとしてとり扱います。しかし胃癌の手術のような大きな手術の場合は第3日頃でないとなかなか患者が起き上ることを納得しません。
早期離床という考えかたは50年もまえからあつたのですが,おおくの手術のあとひろくおこなわれるようになつたのは今度の大戰中からでしよう。いまでは早期離床という單行本さえあります。術後仰臥をつづけているとどうしても肺の合併症がおこりやすいし,そうでなくとも體がだるく體力筋力などが囘復しにくいわけです。こういう病訴や症状にふかく注意して,うまく取りのぞく方法を考えるのが英米醫學のよい點ですが,これもそのような考えかたからうまれたものではないでしようか。
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