特集 ARDS
2.ALI/ARDSの発症機序―細胞・分子生物学的機序
橋本 壮志
1
,
橋本 悟
1
Soshi HASHIMOTO
1
,
Satoru HASHIMOTO
1
1京都府立医科大学 麻酔科・集中治療部
pp.15-24
発行日 2009年1月1日
Published Date 2009/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102100159
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■ALI/ARDSの発症機序
急性肺損傷acute lung injury(ALI)および急性呼吸窮(促)迫症候群acute respiratory distress syndrome(ARDS)はさまざまな基礎疾患により発症し,肺の非特異的炎症に起因する肺胞上皮ならびに肺血管内皮細胞の障害による透過性亢進型の肺水腫像を呈する症候群である1)(図1)。肺炎や胃内容物の誤嚥,肺挫傷などの直接的な肺損傷(pulmonary causes)のほかに,肺外の間接的要因(extrapulmonary causes),すなわち敗血症や重度の外傷,熱傷,急性膵炎などに続発することが知られている。
基礎疾患の種類にかかわらず,生体に加えられた過度の侵襲は,高サイトカイン血症に特徴づけられる全身性炎症反応症候群systemic inflammatory response syndrome(SIRS)と呼ばれる全身性の炎症反応を惹起させ,肺組織を含めた遠隔臓器の機能障害を引き起こす。それゆえ,ALI/ARDSは多臓器不全症候群multiple organ dysfunction syndrome(MODS)の一分画症ともいえる。
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