特集 ARDS
3.ALI/ARDSの発症機序―病理学的観点から
田坂 定智
1
,
林 雄一郎
2
Sadatomo TASAKA
1
,
Yuichiro HAYASHI
2
1慶應義塾大学医学部 呼吸器内科
2慶應義塾大学病院 病理診断部
pp.25-31
発行日 2009年1月1日
Published Date 2009/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102100160
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急性呼吸窮迫症候群acute respiratory distress syndrome(ARDS)は,敗血症や重症肺炎,多発外傷などの種々の病態を誘因として発症し,肺の急性炎症とそれに伴う肺毛細血管内皮の透過性亢進による肺水腫を特徴とする1)。ARDSの概念は,1967年にAshbaughらによって初めて提唱されたが,その後さまざまな変遷をみた。1994年に発表されたAmerican-European Consensus Conference on ARDS(AECC)による診断基準が現在広く使われているが,これは ①急性の経過,②胸部X線上の両側性浸潤陰影,③低酸素血症(PaO2/FIO2≦200Torr),④左心不全の否定,の4項目からなる2)。また,低酸素血症の程度に基づき,より軽症(PaO2/FIO2≦300Torr)のものを急性肺損傷acute lung injury(ALI)と定義している2)。ARDSとALIとの間には,病理学的にも,また治療方針に関しても大きな違いがないため,ALI/ARDSとして一括して論じられることが多い1)。本稿ではALI/ARDSの発症機序について病理学的観点から述べる。
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