Japanese
English
特集 ALI/ARDS治療の新展開
ALI/ARDSの病態と治療
Acute Lung Injury/Acute Respiratory Distress Syndrome(ALI/ARDS)―The Mechanisms,Present Therapeutic Strategies and Future Perspectives
武政 聡浩
1
,
石井 芳樹
1
Akihiro Takemasa
1
,
Yoshiki Ishii
1
1獨協医科大学呼吸器・アレルギー内科
1Department of Pulmonary Medicine and Clinical Immunology, Dokkyo Medical University School of Medicine
pp.555-564
発行日 2010年6月15日
Published Date 2010/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404101489
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はじめに
最近の米国調査で,急性肺損傷(acute lung injury;ALI)の発症率は人口10万人当たり78.9人,急性呼吸窮迫症候群(acute respiratory distress syndrome;ARDS)は人口10万人当たり58.7人となっている1).死亡率が40~50%とすると年間74,500人がALIで死亡し,59,000人がARDSで死亡する計算となる1).これは乳癌41,528人/年,HIV(human immunodeficiency virus)14,802人/年という年間死亡者数を上回る計算で,ALI/ARDSが稀な疾患ではなく比較的commonな疾患であることを示している.
治療に関わる様々な取り組みから,ALI/ARDSの死亡率は1.1%/年程度の割合で低下しつつあるという報告がある2).一方でARDS死亡率を観察的試験53報と無作為臨床試験(randomized control trial;RCT)36報に分けて解析した報告では1994年以降の死亡率の減少はみられておらず,観察的試験で44%,RTCで36%となっている3).治療法の研究開発にもっと力を注ぎ,さらなる死亡率改善に向けた治療法の進歩が望まれている.
本稿では,ALI/ARDSに関連するこれまでの知見,諸問題,および治療を踏まえた病態などをまとめた.
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