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急性胆石性膵炎は,結石や胆泥が胆管の閉塞を起こし,それに引き続き膵臓に炎症を惹起することで発症する疾患である。約80%の患者は比較的良好な経過をたどり,約20%は重症化する1)。重症急性膵炎は膵壊死や呼吸器不全,多臓器不全のような,さまざまな合併症を誘発し,死亡率は約30%以上と高い2)。
胆石性膵炎の多くは,小さい結石によって起こり,多くの場合は炎症を起こさずに自然に十二指腸に通過する3)と考えられている。したがって,通過障害を起こした胆石や胆泥を取り除き,総胆管を減圧すれば,急性胆石性膵炎の合併症を妨ぐことができると考えられ,外科的・内科的治療が行われてきた。
1970年代後半から1980年代前半にかけて,急性胆石性膵炎に対して胆道減圧のための緊急手術が,治療の選択肢として提案された。ところが,この方法は死亡率の上昇と関連することが示され4),一般的ではなくなった。1980年代後半になると,内視鏡的介入が外科的な胆道検索に取って代わり,結石の除去と胆道ドレナージに有効である内視鏡的乳頭括約筋切開術endoscopic sphincterotomy(ES)も行われるようになった。
その後,急性胆石性膵炎に対する,早期の内視鏡的逆行性胆管膵管造影endoscopic retrograde cholangiopancreatography(ERCP)の有効性について無作為化比較試験(RCT)5~8)が施行された。研究によって結果は異なるが,胆管炎のない軽症急性胆石性膵炎患者への早期ERCPの有効性は認められず,重症例における有効性も確定的な結論を出すに至らなかった。また,これらのRCTをもとにした複数のメタ解析9,10)でも結果は異なっていた。
ここでは,胆石性膵炎の発症機序,成因診断,治療法について,これまでに発表された研究を検証し,実際の患者診療に有用な情報を提供したい。
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