ひとやすみ・18
たかが胆石,されど胆石
中川 国利
1
1仙台赤十字病院外科
pp.426
発行日 2007年3月20日
Published Date 2007/3/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407101761
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従来から「外科は虫垂切除に始まり,虫垂切除に終わる」とされてきた.その理由は,急性虫垂炎は一般外科医が経験する最も頻度の高い疾患であり,手術手技が比較的容易なため,外科医として最初に経験する手術術式だからである.しかしながら,炎症が著明な例では手術手技が困難であり,虫垂切除では済まずに回盲部切除などのより高度の手技を要することがある.さらに,術前診断が急性虫垂炎でも大腸憩室炎や大腸癌,子宮外妊娠などの他疾患であることがあるため,これらの疾患に対する手術にも習熟しておく必要がある.要するに,「虫垂切除は初心者でもできる容易な手術ではあるが,ときに手術に難渋することがある.虫垂切除といえども決して侮ることなく,全力を尽くして手術に臨むべし」との戒めでもある.
腹腔鏡下手術は従来の開腹手術と比較して手術侵襲が小さいことから,種々の疾患に応用されつつある.特に,胆囊結石例に対しては腹腔鏡下胆囊摘出術がいまや標準術式とされ,開腹下に行うことはなくなった.確かに炎症のない胆囊結石例では手技は容易であり,短時間で手術は終了する.しかし,炎症がない症例でも,オリエンテーションを間違うと胆囊壁や動脈を損傷する危険性がある.動脈を損傷すると術野は血液で覆われ,手術は途端に困難となる.いわんや炎症が著明な例では周囲臓器と著明に癒着しているため,総胆管や腸管を損傷する危険性が高まる.
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