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急性膵炎とは,種々の異なったトリガーにより膵臓に発症した急性炎症性病変の総称である。そのため急性膵炎は,一過性の腹部症状のみで軽快する軽症急性膵炎から,生命維持が困難な最重症急性膵炎まで,さまざまな臨床像を呈する。トリガーは種々あるが,いずれも膵臓に過剰な刺激が加わり,膵臓の消化酵素(前駆体の状態で存在している)を活性化させることが共通の原因である。そして,本来ならば食物として摂取した肉や脂肪を消化するための膵臓の消化酵素が,自分自身の組織を消化し始める(自己消化)のが,急性膵炎の病態である。炎症の波及が,膵局所,あるいは膵周囲組織にとどまるものが軽症急性膵炎である。一方,サイトカイン反応の結果,全身に炎症性反応が広がり,活性化された好中球からプロテアーゼや活性酸素が放出された結果,重要臓器障害を合併し,集中治療を必要とする病態が重症急性膵炎である。
pseudocyst(仮性囊胞)は,急性膵炎のほか,膵外傷,慢性膵炎時に形成される。急性膵炎時のpseudocystは,急性膵炎に伴う炎症性滲出液の貯留,膵管壁の自己消化に伴う膵液漏,および膵液による膵周囲組織の自己消化の結果生成される組織崩壊産物の貯留,などによって形成される。急性膵炎時に滲出液が貯留する(acute fluid collection)頻度は約40%であり,そのうち,約25~30%(急性膵炎全体では6~16%)で発症後4週以降にpseudocystが形成される1~4)(図1)。壊死性膵炎で膵壊死領域が25%を超える場合は,65%にpseudocystが形成される5)。pseudocystが感染し,囊胞内に膿の貯留を認めるようになると,この場合も膵膿瘍と呼ばれる。
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