特集 Infection Control
1.はじめに
林 淑朗
1,2
Yoshiro HAYASHI
1,2
1Royal Brisbane and Women's Hospital, Department of Intensive Care Medicine
2The University of Queensland, Centre for Clinical Research
pp.1-2
発行日 2011年1月1日
Published Date 2011/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102100001
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- 文献概要
つい最近も,多剤耐性菌による院内感染の問題が,さまざまなメディアを通して,集中的に報じられた時期があった。いわゆるマスコミは,真の社会正義とは程遠い姿勢で,こぞってアウトブレイクを起こした医療機関をこれでもかと叩き,断片的な情報,質の低い情報で,不必要に社会不安をあおった。そのうえ,各種行政機関までもが,それに踊らされた。そのことで,すでに崩壊寸前の医療現場は搔き乱され,医療従事者には,およそ患者の利益につながるとは思えない,さまざまな負荷がかけられた。
もちろん,院内感染を正当化するつもりなど毛頭ない。患者にとって院内感染は悪以外の何物でもなく,各医療機関がゼロ・トレランス方式で予防戦略を立ててゆくことは当然である。しかし,起こるべきではないという理由で,行政や社会が,それを起こした医療機関やそこで働いていた医療従事者に懲罰を科すような減点主義的な手法が,はたして患者に恩恵をもたらすか,もたらすとは到底思えない。実際,どんなに優れた医療機関でも,院内感染や多剤耐性菌をゼロにはできない。また,時にアウトブレイクも経験する。
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