特集 ICUで遭遇する血液疾患
Part 1 ICUでのコモンプロブレムの鑑別診断と対処
1.重症患者に併発する血液疾患
1-3.ヘパリン起因性血小板減少症—しばしば疑うが診断は難しい
横地 律子
1
,
林 淑朗
1,2
Ritsuko YOKOCHI
1
,
Yoshiro HAYASHI
1,2
1鉄蕉会亀田総合病院 集中治療科
2The University of Queensland, Centre for Clinical Research
pp.245-250
発行日 2015年4月1日
Published Date 2015/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102200156
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ヘパリン起因性血小板減少症heparin-induced thrombocytopenia(HIT)はヘパリン使用に伴う重篤な合併症で,免疫学的機序を介して引き起こされ,中等度の血小板減少症と逆説的に起こる重篤な動静脈の血栓塞栓症を主たる臨床像とする。HITは,いかなる量や種類のヘパリン(例:ヘパリン生理食塩液ロック,ヘパリンでコートされたカテーテル,低分子ヘパリン)でも引き起こされる可能性がある。
集中治療医にとって実臨床における難しさは,ヘパリン使用歴と血小板減少の両方を満たすICU患者は多いが,そのなかでHITの患者はまれであるにもかかわらず,HITの重篤性や診断の難しさが原因で,HITの過剰診断,不必要な直接トロンビン阻害薬投与,必要なヘパリンに対する過剰な回避がなされることである。特に,確定診断のゴールドスタンダードであるセロトニン放出試験14C serotonin release assay(SRA)が実質的に利用不可能である点が,我が国におけるHITの診断と治療をより複雑にしている。なお,非免疫学的機序で起こるHIT(すなわちⅠ型HIT)は臨床的意義が小さいので,本稿では議論の対象としない。
Summary
●HITは診断が困難かつ,重篤な疾患である。
●確定診断はセロトニン放出試験で行うが,専門研究機関でしか施行できないため,4T'sスコアとELISAで臨床的判断を行う。
●4T'sスコアによる検査前確率が高ければ,迅速に治療的介入を始める。
●血液内科専門医へのコンサルテーションが重要である。
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