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Anesthesia & Analgesia
Editorial:
Faraoni D, Levy JH. Tranexamic acid for acute hemorrhage:When is enough evidence enough? Anesth Analg 2019;129:1459-61.
Article:
Lier H, Maegele M, Shander A. Tranexamic acid for acute hemorrhage:a narrative review of landmark studies and a critical reappraisal of its use over the last decade. Anesth Analg 2019;129:1574-84.
■トラネキサム酸の急性期医療における位置づけ
トラネキサム酸は1960年代に日本で開発された抗線溶薬である。トラネキサム酸はプラスミノーゲンに結合してその活性化を阻害し,フィブリン分解を妨げる。以前は,複雑な心臓手術や心臓再手術時の出血防止のために,抗プラスミン薬としてアプロチニンが広く使用されていた。しかし,アプロチニンによる腎障害,腎代替療法導入の必要性の増加,心筋梗塞発生頻度の増加といった重大な副作用が2006年の報告(N Engl J Med 2006;354:353-65)以降も相次ぎ,アプロチニンの使用は急速に減少した。そして,2010年に発表されたCRASH-2試験(Lancet 2010;376:23-32)やその後のサブ解析(Lancet 2011;377:1096-101)では,外傷患者にトラネキサム酸を出血開始3時間以内に投与すると出血による死亡率が低下することが報告された。分娩後出血患者を対象にしたWOrld Maternal ANtifibrinolytic(WOMAN)試験でも,トラネキサム酸を分娩後3時間以内に投与すると生存率が上昇することが報告されている。CRASH-2試験とWOMAN試験の結果からは,トラネキサム酸の投与が15分遅れるごとに生存率に与える有用性が10%ずつ低下することが示唆されている。外傷患者のみならず,産科出血や整形外科手術などの予定手術でもトラネキサム酸の使用がガイドラインで推奨されるようになってきた。
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