快人快説
最先端の研究テクノロジー紹介④—ゲノム解析と精密医療
油谷 浩幸
1
Hiroyuki ABURATANI
1
1東京大学 先端科学技術研究センター
pp.1171-1179
発行日 2017年12月1日
Published Date 2017/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101201013
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はじめに
次世代シーケンサーNext Generation Sequencerが登場してはや10年となり1),個人の全ゲノム配列を決定する解析コストが1,000ドルまで低下した(図1)。数十万人におよぶ健常人のゲノム配列がデータベース化され,ゲノムの個人差や疾患の遺伝素因が解明される一方,種々の疾患症例のゲノム解析も進められている2)。顕性遺伝性疾患症例で認められた原因遺伝子変異の半数は両親由来ではなくde novoに生じたものであり,疾患メカニズム解明におけるゲノム解析の重要性が改めて示された。がん患者の正常組織と腫瘍組織のDNAをそれぞれゲノム解析することで,がん細胞に生じた体細胞変異を同定できる。これらの研究成果を医療に還元すべく,日本でもゲノム解析結果にもとづいて治療方針を決定する「ゲノム医療」を推進するための基盤作りが進められている。
本稿では,次世代シーケンサーによる疾患ゲノム解析の現状を紹介し,がんを例としてゲノム医療の実践へ向けての課題についても概説する。
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