徹底分析シリーズ 麻酔科医のプロフェッショナリズムを考える
コラム:やってみよう,significant event analysis—難しい患者への対応は組織として行う必要性を痛感
青山 紘子
1
Hiroko AOYAMA
1
1トロント大学 集中治療医学講座
pp.344-345
発行日 2017年4月1日
Published Date 2017/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101200823
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significant event analysis(SEA)を用いて効果的な振り返りをすることで,個々の行動変容を促すとともに,医療そのものの質の向上や,患者やその家族はもちろん,診療にかかわる医療従事者側の安全性の向上をも期待できる。これは,広義のquality improvementの一環としても重要な手法である。
今回,私が日本で経験した苦い出来事を取り上げたい。6年前の一件であるが,今でも頻回に思い出しては,自分の中でさまざまな面からの「振り返り」を無意識に行っている。さらに今回は,NHSスコットランド教育局が新しく提唱するEnhanced SEAという手法で掘り下げてみたい。これまでSEAの問題点として,個人の失敗やミスそのものにフォーカスし,建設的なフィードバックに欠けること(blame culture)や悪いアウトカムを生じた事象を取り上げた当事者が周囲からのネガティブフィードバックにより精神的なケアを必要とする状態に陥ること(“second victim”syndrome)がよく取り上げられてきた。Enhanced SEA はhuman error theoryを取り入れて,個人の「後ろめたさ」や「ネガティブな印象付け」にフォーカスしないよう,周囲とのかかわりや環境因子などを取り込み,より客観的な分析につなげていこうとする手法である。個人の感情や行動変容といった“self”レベルに問題をとどめることなく,より全体的な改善につなげていくことこそがSEAの核である,と考える。
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