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●1 意義深い出来事
九州大学経済学府大学院産業マネジメント専攻,別名 九州大学ビジネス・スクール(略称QBS)に2008年度から2年間在学し,経営学修士号(MBA)を取得した。1年目に会計や企業倫理などの必修基礎科目を履修(写真1),2年目には応用科目に加え中村裕昭教授主催のゼミで経営の実践研究にあたり,財務分析のスペシャリストである教授に議論を挑んではねじ伏せられた1)。夕刻から開講する「夜学」スタイルで,学業と医師業を危ういバランスで両立させながらの道のりだった。
「白熱教室」として知られたマイケル・サンデルの講義の如く,QBSでも核となるのはディスカッションだ。同期生には有名企業の幹部候補生や弁護士,公認会計士さらに個人経営者や自治体職員など,多彩な顔ぶれが並んだ。ビジネス知識ゼロの引け目もあり,最初は発言のきっかけさえつかめなかったが,それが大きな誤りだと気づいたのは,内外の「実例」を題材に,背景の異なる参加者が述べ合う「ケース・メソッド」において。その目的は「用意された正解」への到達ではない。「専門家」しかもち得ないユニークな意見を統合し,まったく新しいアイディアを生み出すことである。要は,積極的に参加することに意義があると解釈し,麻酔科医としての経験をもとに意見すると,これが高く評価された。例えば,一足制移行の議論が遅々として進まなかったが,院長に働きかけたことですみやかにまとまった事例などを交えて,病院内で新規提案を行う際はより上位の上司に具申するほうが効果的だという話をすると,「垂直型組織におけるトップダウンの有効性」を示すものとして好評だった。閉講後の講義室に有志が居残りディスカッションを続ける気風もあり,これに加わることもあった。留学生との合同科目では公式言語が英語とされ,しばしばこれにも向き合った。
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