徹底分析シリーズ 安全な麻酔のためのモニター指針
巻頭言
稲田 英一
1
1順天堂大学医学部 麻酔科学・ペインクリニック講座
pp.327
発行日 2013年4月1日
Published Date 2013/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101101791
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- 文献概要
麻酔科医にとって,モニター機器は,患者からの生体情報を得たり,麻酔器や人工呼吸器などの作動状況を知る重要なツールである。しかし,何よりも重要なことは,モニター機器から得た情報を,患者の合併症などを含む全身状態,手術の進行状況や見通し,術中の身体所見や検査所見,輸血用血液製剤の在庫状況といった手術室外の状況など,あらゆる情報と統合して,治療的な判断を行うことである。
モニター機器は,われわれ麻酔科医にとって便利なツールであるが,そこから得られる情報の有用性や限界についてよく理解していないと,モニター機器が発する誤った情報に惑わされる。われわれは,モニター機器が発する情報が正しいものかを,判断する能力を身につける必要がある。リアルタイムの情報を与えてくれるモニター機器もあれば,ある程度のタイムラグがあるものもある。血管内圧の解釈にしても,呼吸性変動がある場合,どの値が最も正しい情報かを知る必要がある。
残念ながら,現在のモニター機器は,現在の患者の情報は示すが,次の瞬間,次の数分間,数時間後に起こることについての情報を与えてくれるわけではない。麻酔科医が,五感や,手術室内の会話や外科医の声のトーンまで含めたあらゆる情報を,総合的に判断する必要がある。
モニターを見るか,患者を診るか,それによって麻酔科医の資質は分かれることを肝に銘じておきたい。
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