徹底分析シリーズ 研修医の素朴な疑問に答えます 生理メカニズム
巻頭言
稲田 英一
1
1順天堂大学医学部 麻酔科学・ペインクリニック講座
pp.940-941
発行日 2014年10月1日
Published Date 2014/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101200008
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- 文献概要
麻酔管理をする際に,体内制御機構についての生理学を理解しておくことは必須である。生体にはホメオスタシスを保つための機構が備わっており,多少の外乱が加わっても,生命を維持することができる。腎臓摘出術や肺全摘術が可能であることからもわかるように,臓器機能の半分が失われたとしても,私たちは大きな支障なく生活をすることができる。400mL献血をしても,輸液を受けることもなく,直後から普通に生活をすることができるし,高山に登って吸入酸素濃度が多少低下しても,組織の酸素化は十分に行うことができる。それは,自律神経系や内分泌反応を主体とした代償機構によるものである。
麻酔中には血圧変動が起こるが,大きな合併症を起こすことはまれである。そこには,臓器灌流を維持するための自己調節能が大きく寄与している。呼吸と心臓にも密接な関係がある。両者はともに胸腔内に位置し,肺血管系でつながっているという,物理的,解剖学的に密接な関係があると同時に,血液の酸素化や酸素運搬という機能面でも密接な関係にある。呼吸が変化すれば,循環も変化する。その逆もしかりである。このような生理的メカニズムを理解し,さらに病態生理学を理解し,それらを治療するための薬物療法や人工呼吸,透析,補助循環などの機械的療法を理解することにより,周術期管理の幅と深さは格段に向上するであろう。
今回の素朴な疑問は,呼吸と循環・臓器循環に関する生理メカニズムを中心に取り上げた。体内調節機構の素晴らしさを感じていただきたい。また,これらの生理メカニズムを理解することにより,麻酔管理の奥深さを感じて,日々の麻酔を楽しんでいただきたいと願っている。
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