症例検討 小児の末梢神経ブロック
巻頭言
森本 康裕
1
1宇部興産中央病院 麻酔科
pp.863
発行日 2014年9月1日
Published Date 2014/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101102224
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- 文献概要
20年前のことである。新任の病院では小児の鼠径ヘルニア手術が多かった。術後にある程度の鎮痛を得ることができるようにと,術中にペンタゾシンを十分に投与していた。ところが上司に,「先生の麻酔した患者は術後病棟で泣かないので看護師が不安だと言っている。ペンタゾシン投与を止めるように」と言われてしまった。当時はそのような時代だった。 時は流れ,小児においても術後鎮痛の重要性が認識されるようになってきている。しかし,一般病院では小児に対して全身麻酔下に硬膜外麻酔を行うことには抵抗が大きい。オピオイドの全身投与も,新生児,乳児ともなると適切な量で投与する自信がない。そこで注目されているのが末梢神経ブロックである。 本症例検討では,総論の後,虫垂炎,鼠径ヘルニア,臍ヘルニアといった,どの施設でも行われている3症例を選んだ。同じ手術であっても,腹腔鏡下手術なのか,腹腔鏡下であってもポートの位置によりブロックのアプローチは異なる。筆者らがブロックの計画をどのように考え,実際の麻酔を実践しているのかを参考にしてもらいたい。最後にchallengingな症例として新生児に対する胸部傍脊椎ブロックを紹介する。 筆者らに共通しているのは,局所麻酔薬中毒を避けるために投与量を厳密にしている点と,ブロックをmultimodal analgesiaの一環とし,ほかの鎮痛法も可能なかぎり実践している点である。小児に対する全身麻酔薬の毒性が懸念される現在,本特集を区域麻酔併用の小児麻酔時代へのきっかけにしていただきたい。
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