症例検討 周術期神経障害 2
巻頭言
森本 康裕
1
1宇部興産中央病院 麻酔科
pp.551
発行日 2016年6月1日
Published Date 2016/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101200588
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- 文献概要
今回は周術期神経障害を起こした3症例を提示する。どの症例も,末梢神経ブロック,術中の低血圧,硬膜外麻酔など,麻酔科側にも原因となる手技,合併症がある。このような場合,必ず自分で患者を診察し,神経学的所見から障害部位を推定,必要な検索を進めていくことが重要である。そのうえで,術者や患者には慎重に対応していかなければならない。そうしないと,麻酔科の手技や麻酔管理に原因があるとされてしまう可能性がある。
末梢神経ブロックに伴う神経学的障害の発生は比較的多いが,ほとんどは一過性である。また,通常と同じ局所麻酔薬であっても,患者によっては効果が長時間持続することがあることを頭に入れておく必要がある。
未破裂脳動脈瘤の治療には,開頭クリッピング術とコイル塞栓術があるが,いずれも新たな神経障害を発生させないように,電気生理学的検査などを使いながら手術が進められることが多い。麻酔科サイドでも,血圧管理や早期覚醒などで安全な麻酔管理を心掛けたい。今回の提示症例も早期に良好な覚醒を得ることができているため,障害の早期診断が可能であったと考えられる。
開腹手術と硬膜外麻酔は,術後に下肢の障害を生じた場合,手術手技,体位など,手術に関連したリスクと同時に硬膜外麻酔の関与が問題となる。近年は砕石位の支持法が改良され神経障害の頻度は減っているが,依然として体位による総腓骨神経障害は問題である。最近は,超音波ガイド下末梢神経ブロックの普及で,麻酔科医の解剖の知識は増えている。体位作成時にも麻酔科医が介入し,障害が起こった場合も超音波による神経の確認など,診断まで積極的に行っていきたい。
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