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前号の初級編に続く上級編をお届けする。
初級編では主に,全身麻酔との併用による,術後鎮痛としての末梢神経ブロックを取り上げた。しかし,単回の末梢神経ブロックでは術後鎮痛に限界がある。例えば上肢の単回ブロックでは,長時間作用型の局所麻酔薬を用いても,手術当日の深夜には効果が消失する。長時間の鎮痛を求めて高濃度の局所麻酔薬を使用すると,運動神経麻痺が生じるため,患者の不安が強くなる。そこで,カテーテルを留置して局所麻酔薬を持続投与する,持続末梢神経ブロックの出番となる。
これまで超音波ガイド下で行うカテーテルの留置は,短軸像で神経を描出し,神経の走行に沿って交差法で行うことが多かった。しかし最近では,超音波装置の性能やブロック技術の向上により,平行法でのアプローチが一般的になっている。これにより,ブロック針の刺入,局所麻酔薬による組織の液性剝離,カテーテルの留置,さらにはカテーテルからの局所麻酔薬投与のすべてを超音波ガイド下に行うことが可能となり,安全性と有効性が高まった。本症例検討で紹介する技術を習得することで,硬膜外麻酔が行えない下肢手術や体幹手術でも,硬膜外鎮痛と同等か,それ以上の術後鎮痛を得ることができる。
また,全身麻酔や脊髄くも膜下麻酔が行えない高リスク症例も,末梢神経ブロックの適応である。術野の十分な鎮痛が得られれば,末梢神経ブロック単独での管理,自発呼吸下の鎮静,あるいは気道確保をしての全身麻酔と,患者の状態に応じて麻酔方法を考えることができる。これまで苦労していた高リスクの上肢や下肢の手術も,末梢神経ブロックにより,安全な麻酔管理が可能である。
超音波ガイド下末梢神経ブロックは,麻酔の可能性を大きく広げ,より快適な麻酔を患者に提供する手技である。今回取り上げたブロック手技が,特別なものではなくなる日が来ることを期待している。
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