徹底分析シリーズ 硬膜外さいこう
巻頭言
森本 康裕
1
1宇部興産中央病院 麻酔科
pp.789
発行日 2021年8月1日
Published Date 2021/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101202045
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- 文献概要
長い間多くの手術で周術期鎮痛のゴールドスタンダードであった硬膜外麻酔は,現在,岐路に立たされている。患者の高齢化や高リスク化,術後抗凝固療法のルーチン化,オピオイドのIV-PCAや末梢神経ブロック,さらにアセトアミノフェンの静注薬の発売などにより,硬膜外を避けて別の鎮痛法を選択する機会が増えてきた。筆者の施設では,昨年,麻酔科管理症例で硬膜外を併用した症例はわずかに1%だった。胸部手術では胸部傍脊椎ブロック,腹部手術では腹横筋膜面ブロックや腹直筋鞘ブロックとフェンタニルのIV-PCAを使用することで,硬膜外麻酔を使用しなくても良好な術後鎮痛が得られている。
一方で,まだまだ硬膜外を主たる術後鎮痛法として使用している施設もあるだろう。そこで本徹底分析シリーズでは,胸部および腹部手術に対して,反硬膜外派と硬膜外派の立場からそれぞれの利点,欠点を述べてもらった。また,今後も硬膜外鎮痛が必要な領域として産科麻酔を取り上げた。周術期の鎮痛法に硬膜外をどのように取り入れるのかは,施設ごとに状況が違うだろう。また,それに伴い自分の手技についても再考していく必要がある。硬膜外穿刺を毎日している麻酔科医と,月に1回程度の麻酔科医とでは,優先するポイントが異なってくるだろう。症例が減った施設でも,誰でも安全で確実に穿刺できる手技が求められる。そこで,特集後半ではエキスパートに,それぞれ自分の手技について自由に語ってもらった。
今回の特集を通して,各自あるいは各施設での硬膜外麻酔の立ち位置や手技について,もう一度見直してみてはいかがだろうか。
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