徹底分析シリーズ もう一度始めるTIVA
巻頭言
森本 康裕
1
1宇部興産中央病院 麻酔科
pp.705
発行日 2020年7月1日
Published Date 2020/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101201716
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- 文献概要
全静脈麻酔total intravenous anesthesia(TIVA)は好き嫌いが激しい。「大好きでほとんどの症例をTIVAでやっている」という人から「嫌いなのですべて吸入麻酔で維持」という人まで,さまざまである。施設によってはTIVA嫌いの管理職がいて,TCIポンプすら購入していないところまで存在する。
では,TIVAはまったく実践しなくてもよい麻酔法なのだろうか? 覚醒のスムーズさ,悪心・嘔吐の少なさなどのメリットがあるのはよく知られているが,近年は脳神経外科手術や大血管手術はもちろん,腰部の脊椎手術まで術中電気生理学的検査が行われるようになり,TIVAのニーズは高まっている。デスフルランでも運動誘発電位(MEP)は測定できるという意見もあるが,より抑制の少ないTIVAが第一選択であることには変わりはない。
本徹底分析シリーズは,「これからTIVAを実践してみたい」,「あまり実践していなかったが外科サイドからの要望などでTIVAで麻酔することが必要になった」など,ある程度麻酔の基礎はできている麻酔科医がスムーズにTIVAを実践できるようになることを目的とした。意外と理解できていないTCIポンプの基本的な使い方から,脳波の見方,小児でのTIVAまでを幅広く網羅している。今では一般的になった薬物動態のシミュレーションは,20年ほど前から静脈麻酔に熱心な麻酔科医の働きかけによって普及してきた。TIVAを実践することは,吸入麻酔を含めた麻酔全体を深く考えることなのである。本特集をきっかけに,TIVAが好きになってもらえれば,これ以上の喜びはない。
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