徹底分析シリーズ アセトアミノフェン
巻頭言
森本 康裕
1
1宇部興産中央病院 麻酔科
pp.873
発行日 2015年9月1日
Published Date 2015/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101200369
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- 文献概要
アセトアミノフェンといえば,数年前まで小児に使用する坐剤というイメージしかなかった。しかし,トラムセットが上市され,さらに承認用量が4000mg/日に引き上げられ,そして静注薬アセリオが登場したことにより,“周術期管理では必須の薬”へと認識が変わってきた。
アセトアミノフェンは古くからある薬物でありながら,その作用機序はよくわかっていない。剤型も,坐薬,経口薬,静注薬と多く,その使い分けが難しい。そこで本徹底分析ではまず,薬理学的特徴と薬物動態についてそれぞれ解説し,使用に際しての基礎知識を得られるようにした。そして,成人と小児における周術期の使用,さらに麻酔関連領域としてペインクリニック,緩和ケアでの使用について,臨床の視点からまとめている。周術期管理では静注薬が主体となる。成人の術後痛管理では,欧州区域麻酔学会の推奨する「1000mgを1日4回投与」を基本にしたうえで,区域麻酔やオピオイド,さらにNSAIDsを併用するmultimodal analgesiaによる管理を実践していきたい。なんでもかんでも硬膜外や神経ブロックではなく,症例により必要な鎮痛法をうまく選択していくのが,これからの麻酔科医が行う術後痛管理であり,そのベースがアセトアミノフェンである。一方,注意したいのは過量投与による中毒である。特に小児や体重の少ない患者では,投与量に注意するとともに中毒の可能性を頭に常に入れておくことが重要である。
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