特集 病気の分子細胞生物学
8.代謝・栄養障害
ホロカルボキシラーゼ合成酵素欠損症
鈴木 洋一
1
,
成澤 邦明
1
Yoichi Suzuki
1
,
Kuniaki Narisawa
1
1東北大学大学院医学系研究科小児医学講座遺伝病学分野
pp.441-442
発行日 1999年10月15日
Published Date 1999/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425901755
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[疾患概略]
ホロカルボキシラーゼ合成酵素(HCS)は,水溶性ビタミンの一種であるビオチンを種々のカルボキシラーゼに取り込ませる反応を触媒する酵素である。哺乳類ではビオチンを補酵素とする4種類のカルボキシラーゼの存在が確認されている。すなわち,ロイシンの異化経路のメチルクロトニルCoAカルボキシラーゼ,脂肪酸合成の律速酵素であるアセチルCoAカルボキシラーゼ,糖新生系の律速酵素の一つであるピルビン酸カルボキシラーゼ,バリンやイソロイシンなどのアミノ酸の異化経路に存在するプロピオニルCoAカルボキシラーゼの各酵素である。HCSはビオチンの生体内での利用の鍵酵素であり,多様な代謝経路に関与する酵素であるということができる。
HCS欠損症は本酵素遺伝子の異常により,酵素の活性低下またはビオチンに対する親和性の低下を一次的な原因とし,複数のカルボキシラーゼの活性低下を反映した多彩な生化学的異常,臨床症状を示す常染色体劣性の先天性代謝異常症である。プロピオニルCoAカルボキシラーゼの活性低下によっては,プロピオン酸が血中に蓄積し,3-ヒドロキシプオピオン酸,メチルシトレート,チグリルグリシンが尿中に排泄される。ピルビン酸カルボキシラーゼの活性低下は高乳酸血症,高アラニン血症などを惹起する。
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