特集 病気の分子細胞生物学
8.代謝・栄養障害
長鎖アシルCoAデヒドロゲナーゼ欠損症
青山 俊文
1
Toshifumi Aoyama
1
1信州大学医学部加齢適応研究センター
pp.439-440
発行日 1999年10月15日
Published Date 1999/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425901754
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[疾患概略]
ミトコンドリアに局在する脂肪酸β酸化系の初発反応は,アシルCoAデヒドロゲナーゼ群により触媒される。炭素数4から18に至る広範な基質に対処するため,基質特異性の異なる4種のデヒドロゲナーゼが存在する1)。短鎖(SCAD),中鎖(MCAD),長鎖(LCAD),極長鎖(VLCAD)の4種のうち,MCAD欠損症は低ケトン性低血糖症による脳障害を生じる,出現頻度の高い先天性異常症として知られている。
長鎖アシルCoAデヒドロゲナーゼ欠損症はLCAD欠損に由来するものとみなされてきたが,実際はVLCAD欠損に由来することが1995年に報告された2)。VLCAD欠損症はMCAD欠損症と同様に低ケトン性低血糖症を呈するが,長鎖脂肪酸代謝不全に由来する長鎖脂肪酸の蓄積により,肥大性心筋症・肝肥大・肝機能障害・骨格筋機能障害などを高頻度にともなうことを特徴とする。発症年齢は乳幼児期に偏っており,致死率は70%程度である。低脂肪食・カルニチン投与などの治療法が試みられているが,有効な治療手段は現在のところ存在しない。MCAD欠損症患者は白人のみであるが,VLCAD欠損症患者は少数ながら日本人にも見出されている2)。患者により細胞内のVLCAD蛋白残存量は異なり,残存量が多いほど臨床症状がマイルドである傾向がある2)。
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