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暑いですね。7月の最後の日にこのあとがきを書いています。本号が店頭に並ぶのは9月初頭になると思いますが,まだまだこの暑さは続いているものと想像します。気温40℃超を○○市で記録したというニュースが連日飛び込んできます。とんでもないですね。私の子供の頃は極端に暑い日と言ってもせいぜい31〜32℃,35℃を越えることなど皆無であったと記憶しています。これぐらいの暑さであれば子供も元気に野外活動ができ,野外体験が積めるだろう,という前提での40日間の夏休みでしょうが,この暑さで小中学生の活動も大きく変化しています。が,長年続いてきた夏のルーチンは変わることがありません。高校野球の地方予選は終わったばかりで甲子園出場チームが出そろいました。しかし,この酷暑の中,昼間に甲子園球場で野球をする,正気の沙汰ではないと私は思います。読者の皆様はどうお考えになるでしょうか。夏の大会を秋に遷す,会場を京セラドームのような屋内球場に変えるなど,選手や観客を守る術はいくつもあるでしょうが,ずっと続いてきた歴史ある“伝統”を変えるのは容易ではないようです。
本号はデジタルメディスンの特集です。電子カルテはデジタルメディスンのわかりやすい一例ですが,プライマリケアでの普及率に関して,日本が世界の水準から大きく後れを取っていることが述べられています。日本での普及の遅れの原因については,導入コストの問題や開業の先生方のデジタルへの親和性の低さが挙げられていますが,私は,紙ベースカルテで立派に臨床をやってこられた先生方の成功体験が一番の要因と思います。“今まで立派にやってきた”:医療を取り巻く環境の激変にもかかわらず変化に一歩踏み出せない:夏の甲子園大会と相通じるところがありますね。電子カルテは患者データの汎用化,データ処理の効率化に通じ,今後の日本の医療の発展に欠くべからざるものと私は思います。しかし,デジタルメディスンはこのレベルにとどまりません。人間の医師ができることを短時間化・高精度化することができるのはAI医療機器を含むデジタルメディスンの強みですが,このことを越えて,人間の医師や従来の検査では代替不可能な,新しい価値の創造に通じるものが多数進行中です。現時点では精神科領域での診断・治療システムの開発が一歩先を行っている印象ですが,脳神経内科もその恩恵を受ける可能性を大きく秘めた領域です。

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