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あとがき
神田 隆
pp.1096
発行日 2024年9月1日
Published Date 2024/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1416202741
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徳田虎雄氏(1938-2024)が逝去されたことは皆様ご存じのことと思います。もう40年以上前のことになりますが,私は医学部6年生のときに一度だけ,徳洲会への勧誘に来られた徳田氏の話を間近で聞いたことがあります。UCSFの教授を階段教室の傍らに座らせて,徳洲会病院に米国型のERを作るのだ,お前たち一緒にやらないか,と熱弁をふるっておられたのを今でもよく思い出します。当時彼は40歳前後だったでしょうか。脂の乗り切った,全身エネルギーの塊のような人物で,当時から毀誉褒貶さまざまな声の聞こえる人でしたが,実弟の死から医師を志し,徳之島に病院を作るのだというお話を伺い,医師となるmotivationとしてこれ以上のものはないなと感服して聴き入っていました。
後日彼がALSに罹患したというニュースに接して,志半ばでこれから自分がやれることに大きな制限がかかり,さぞかし無念であろうと感じたのと同時に,ああいうエネルギッシュな人,ずば抜けた行動力,運動能力を誇る人はやはりALSのリスクなのかなと思ったのを今でもよく覚えています。一流のアスリートにALS罹患者が多いことを読者の皆様は重々承知と思います。ルー・ゲーリック,キャットフィッシュ・ハンター……どんどん出てきますね。イタリアのプロサッカーチームの選手やNFL選手でのALS罹患率の高さが話題になったのも記憶に新しいところです。卓越した運動機能を持つ選ばれし人が動けないALSになる,神様も何と残酷なことをなさるのだろうと思ってしまいますが,TDP-43やFUSなどの分子異常と運動との間には,私たちのまだ知らないリンクがあるのでしょうか。
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