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あとがき
酒井 邦嘉
pp.392
発行日 2025年4月1日
Published Date 2025/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.188160960770040392
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先日,Michael H. Stevens氏(ユタ大学医学部耳鼻咽喉科の名誉教授)からメールが私宛に届いた。互いに面識はないが,本誌がMEDLINEに収載されているおかげで,拙稿「ベートーヴェンの病跡と芸術Ⅱ」(2024年12月号1301-1306頁)の英文要約が目に留まったのだ。ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(Ludwig van Beethoven;1770-1827)が長年患った難聴の原因については諸説ある中,「鉛中毒」が原因であることを初めて明快に指摘したのは,Stevensらによる2013年の論文(Laryngoscope 123: 2854-2858)であった。
ベートーヴェンの剖検では,聴神経に変性(皺状化と中心核の脱落)が報告されており,鉛などの重金属による軸索変性の可能性があった。この可能性を裏づける直接の原因として,「当時の安物のワインには,苦み消しのため鉛を添加することが違法に行われており,ベートーヴェンがそうした低品質のワインを長期にわたり常飲することで,大量の鉛を摂取してしまった可能性がある」とStevensらは指摘したのだった[拙稿「ベートーヴェンの病跡と芸術」(2021年12月号1327-1331頁)に文献14として引用]。

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