特集 精神科治療、この10年で覆った常識とは
“不要な神話”を手放した人たち
—「交代人格を無視する」ではうまくいかない—解離性同一性障害の臨床における「出会い」
岡野 憲一郎
1,2
1本郷の森診療所
2京都大学
pp.18-20
発行日 2023年1月15日
Published Date 2023/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689201079
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「交代人格が出現したら、会うべきか」
「交代人格は無視する」ではうまく行かない—これが私に与えられたテーマだが、実は私は、これに近いことを常日頃から患者さんの家族や治療者に伝えてきた。だから「交代人格は無視する」という姿勢が「精神科にある不思議な“神話”」として今でも存在することを前提とした文章を書くことを、なんとなく不思議に思う。「そうか、これだけ伝えて来ても“神話”は存在し続けているのだ」ということを恐らく認めたくないのであろう。ある意味では私自身が現実を否認したいのかもしれない。
そこで改めて「交代人格が出現したら、主人格とは別の人として会うべきか」と問うてみよう。基本的にはそのとおりである。ただしここで「基本的には」と付けることには意味がある。なぜなら、ここには多くの例外や注意すべき点が含まれているからだ。
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