Japanese
English
特集 現代における解離—診断概念の変遷を踏まえ臨床的な理解を深める
解離はなぜ誤解され,無視されるのか
Why is Dissociation Misunderstood or Ignored?
岡野 憲一郎
1,2
Kenichiro Okano
1,2
1本郷の森診療所
2京都大学
1Hongounomori Clinic, Tokyo, Japan
2Kyoto University
キーワード:
解離性同一性障害
,
dissociative identity disorder
,
誤解
,
misunderstanding
,
交代人格
,
[alter(s)]
,
統合
,
integration
Keyword:
解離性同一性障害
,
dissociative identity disorder
,
誤解
,
misunderstanding
,
交代人格
,
[alter(s)]
,
統合
,
integration
pp.1001-1012
発行日 2024年8月15日
Published Date 2024/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405207348
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抄録
解離性障害,特に解離性同一性障害(DID)が今なお多くの点で誤解され,無視されるという傾向は,治療者の間でさえ起きているようである。筆者は,「DIDを有する人が示す複数の人格は,それぞれが別個の人格ないしは主体として体験される」ことを1つの臨床的な現実として抽出し,それに対する誤解を3段階に分類した。それらは,①治療者が解離性障害の存在を認知しない,否認するという立場にみられる誤解,②治療者が解離性障害の存在を認知したうえで,それでも臨床場面で交代人格と出会うことを回避する傾向ないしは立場,③治療者が交代人格と実際に関わる際に,交代人格を個別の,かつ独立した1つの人格としては認めないという姿勢にみられる誤解,である。筆者はさらに,「最初は1つである人格から分裂してできた交代人格たちは,本来の1つの人格に統合されるべきである」というロジックについても批判的に検討し,DIDを有する患者のそれぞれの人格の主体性と個別性を重んじることの重要性についても論じた。
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