連載 NとEとLGBTQ・2
性同一性の“障害”?
浅沼 智也
pp.419
発行日 2018年5月25日
Published Date 2018/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663200987
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第1回(59巻4号)ではLGBTQという多様な性についての説明がありましたが,今回は,そのなかのT:トランスジェンダーと性同一性障害について,より具体的に説明したいと思います。
まず,性同一性障害(Gender Identity Disorder : GID)ですが,これは,1980年のDSM─Ⅲ(精神疾患の診断統計マニュアル)より公式に用いられた医療用語です。出生時の性別と社会的に生活する性別に違和感,または一致しない状況である当事者が精神科を受診し,医師から診断された“疾患”をいいます。しかし,“障害”と記載されることで違和感や嫌悪感を抱いたり,病気ではないと感じる当事者も多く,医療界が命名し概念化したこの用語に対して,当事者たちを中心に命名,概念化され発達してきた用語がトランスジェンダーです。この言葉は1990年代に入り広がっていき,従来の性別概念の枠から外れたものすべてを包み込む包括的用語になりつつあります。医学的概念の枠に収まらない,さまざまな非典型的な性別のありようを示す概念です。
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