特集 精神科治療、この10年で覆った常識とは
“不要な神話”を手放した人たち
—「隔離・身体的拘束」は必須だろうか?—トラウマインフォームドケアを学び、患者・自分・仲間を大切にする
大西 恵
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1合同会社あしたば こころの相談室道へ
pp.21-23
発行日 2023年1月15日
Published Date 2023/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689201080
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自身にも起きていた「再トラウマ体験」
私がトラウマインフォームドケアにはじめて出会ったのは、前職である有馬高原病院(現ありまこうげんホスピタル)で勤務していた時です。海外研修に参加し、ハワイの病院でトラウマインフォームドケアについて学んできたスタッフが、当院でも取り入れたいと声を上げたことから、法人全体で取り組むことになったのがきっかけでした。最初にトラウマインフォームドケアについて研修を受けた時に考えたのは、実は患者さんのことではなく自分自身に起こっていることでした。
私は大声を聞くと恐怖を感じ、特に男性が怒鳴っていたり、喧嘩をしているのを見ると動悸がしていました。なぜなのか特に考えることはなかったのですが、トラウマインフォームドケアを学ぶと、はじめてそれが自分自身の過去のトラウマ的体験による再トラウマ体験であることがわかりました。幼少期の私の家庭では両親が不仲で、夜になると父親が母親に怒鳴り、母親は泣き叫び、私はそれを聞くのがとても怖く、喧嘩が収まるまで布団を頭からかぶってやり過ごしていました。ですので、男性の怒鳴り声を聞いたり、喧嘩をしているのを見たりすることは、父親が怒鳴る声を思い出す再トラウマ体験だったのです。
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