Japanese
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特集 時代による精神疾患の病像変化
境界性人格障害などの人格障害
A Change Linked with the Time in Clinical Features of Personality Disorders
鈴木 茂
1
Shigeru SUZUKI
1
1県西部浜松医療センター精神科
1Department of Psychiatry, Hamamatsu Medical Center
キーワード:
Personality disorder
,
Post-modernism
,
Narcissistic society
,
Dissociation
Keyword:
Personality disorder
,
Post-modernism
,
Narcissistic society
,
Dissociation
pp.157-164
発行日 2005年2月15日
Published Date 2005/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405100008
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はじめに
精神疾患の病像には,万古不変のように見える側面もあれば,景気のように循環し反復的に出没する側面も存在する。人格障害の領域で言えば,「他者に対する同情や良心の呵責を欠いて,しばしば犯罪を繰り返す」タイプは,その名称が情性欠如型精神病質,社会病質,サイコパス,反社会性人格障害といった具合に変化しようとも,時と場所を超えてつねに存在したであろうし,歴史上いったんは下火になったヒステリーや解離性健忘といった病態が,近年再び増加していることも周知の事実である。
ヒステリーや解離現象の今日における回帰は,一面で20世紀初頭ないし大正時代に類似した社会状況の再来をうかがわせるものである14)。しかし,そこには1990年代以降に歴史上初めて出現したグローバル化やネット情報化社会の発展といった新事態がオーバーラップし,病像の更新に大きくかかわっていることも看過できないだろう。表面的な病像は同じであっても,それを意味づけ評価する規準は時代とともに変化する。変化は,患者からのみならず,精神科医の視点を含む社会構造からも生じてくる。「ポスト近代」の消費文化に適応するための人格像は,近代社会の「自立した個人」像や高度成長・大量生産社会で求められた「規格化された個」としての人間像とはおのずと異なっている。本稿は,近年における人格障害への関心の増大とIT社会における人格形成の問題との関連を探る下準備である。
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