特集2 呉秀三を読む
興味本位で読んでほしい
風野 春樹
1
1東京武蔵野病院・精神科
pp.48-50
発行日 2013年1月15日
Published Date 2013/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689101133
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この本の中でもっともよく知られているのは、「我邦十何萬ノ精神病者ハ実ニ此病ヲ受ケタルノ不幸ノ外ニ、此邦ニ生レタルノ不幸ヲ重ヌルモノト云フベシ」という一節だろう。この一文は、その後もあちこち(たとえば大熊一夫の『ルポ・精神病棟』など)で引用されたため、本書は、当時の精神病者の置かれた劣悪な環境を告発した本、ということになっている。それは確かに間違いというわけではないのだけれど、この一文だけが広く知れ渡ってしまったことは、この本にとって実は不幸なことだったように思える。
告発の書という面ばかりが強調されて、明治大正の農村を精神医学の視点から切り取ったルポルタージュという側面が、忘れ去られることになってしまったからだ。
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