特集 地域保健法10年
住民本位のまちづくり
辻山 幸宣
1
1地方自治総合研究所
pp.96-101
発行日 2005年2月1日
Published Date 2005/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401100019
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
自治体は社会の必要性から住民の手によってつくられた
自治体は,私たち住民の生活する社会の共通的な価値を実現するために,住民の手によって設立されたものである.詳しく述べるとこうである.
1. 村の運営
自治体政府のごとき公共財の管理と地域公共の福祉のための特別の機関がなかった時代に,人々はどのようにして暮らしていただろうか.雨が降って道がぬかるんだら,雨上がりを待って砂利入れをしなければならなかった.また,干ばつで田が干上がるのを防ぐために,あらかじめ溜池を掘っておくことが大切であった.新潟県中越地震のように村と町をつなぐ峠道が崩れたら,新たな抜け道を開拓するか,何日もかかって土砂をよける作業をしなければならなかったであろう.このような村人みんなのために必要な作業は,村人たちが自ら行った.そうする以外に生活を継続することができなかった.そこには自発的とは言えないにせよ,必要としての共同作業への参加が日常的に行われていた.
作業の段取りは「村寄合」で協議・決定された.村寄合には各戸から家長が出席して,年貢・夫役の村請け(藩主の委任事務)の他,田植えや稲刈りなどの共同労働,道路や堤防の工事から村祭り,入会地(共同で使用する権利を有する山林等)の管理まで,あらゆることがそこで決定された.ときに,村八分など村極(むらぎめ・村法・掟)の執行も村寄合の権限として行われた.これら,村寄合での決定,共同作業の実施,祭りの開催など,すべてが村人たちの労働力の持ち寄りによって処理されていたのである.
Copyright © 2005, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.