特集 観察の視点にプラスしたい 身体疾患治療薬と向精神薬の相互作用
悪性腫瘍(がん)
小川 朝生
1
1国立がん研究センター東病院臨床開発センター精神腫瘍学開発部
pp.76-79
発行日 2012年7月15日
Published Date 2012/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689101055
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標準的ながんの薬物療法
がんとは、簡単にいえば、生体の細胞がコントロール機能を失って無制限に増殖するようになり、他の正常組織とのあいだに明確なしきりを作らずに浸潤したり、転移をしたりする状態です。がんを治療するためには、この無制限に増殖をする細胞を、身体から取り除くために、外科的に切除をする、あるいは抗悪性腫瘍薬で死滅させる、放射線を照射することで死滅させるという3つの手段を組み合わせて治療をすることになります。がんが浸潤したり転移をしたりすると、外科的に取り除く(切除をする)ことは困難になり、主に抗悪性腫瘍薬を投与することになります。
抗悪性腫瘍薬はさまざまな種類が開発されており、現在では、がんの種類や全身状態に応じて複数の抗悪性腫瘍薬を組み合わせて用いることが一般的です。たとえば、進行した大腸がんでは、FOLFOXと呼ばれるレジメン(抗悪性腫瘍薬を投薬する定まったスケジュール)があり、オキサリプラチンと呼ばれる白金系の抗がん剤に、フルオロウラシルと呼ばれるフッ化ピリミジン系の代謝拮抗薬系の抗がん剤を併せます。上記のようにがん細胞の遺伝子を傷害してがん細胞を死滅させるように働く抗がん剤のほかに、最近では、がん細胞の増殖を刺激する細胞間のやりとりを妨害してがん細胞の増殖を抑える分子標的薬と呼ばれる薬が出てきています。代表的なものに、肺がんでよく用いられるゲフィニチブ(イレッサ®)があります。
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